4.ガクアジサイ

4.1 ガクアジサイについて

 ガクアジサイは日本原産の植物で、花の周りに咲いている花は生殖機能を持たない、花が退化した飾りの花です。これは昆虫が遠くから花を見つけやすく、目立つ看板のように着飾った花、装飾花と呼ばれています。オシベとメシベのある本当の花は、中央にある米粒のように小さい集合体が花なのです。

 ガクアジサイの仲間に、全体が装飾花になったアジサイ、和紙の繊維をつなぐノリウツギ、山に生育するヤマアジサイ、大木に巻きつくツルアジサイ、岩に絡みつくイワガラミなどがある。アジサイは有名なオランダのシーボルトが愛した花で、ガクアジサイはヨーロッパに伝わり、改良し日本に逆輸入された花です。

4.2 ガクアジサイの花

 右のはガクアジサイです。装飾花の色は種々ありますが、90%前後は赤~青紫の色のようです。花が咲くと花糸が伸び、葯(ヤク:オシベの先端につく花粉の袋)が突き出て、くすんだ蕾の色から一変して、優しい濃紺の花に変わります。

 注目してほしいのは、装飾花の花弁の向きです。装飾花は花が咲き受粉するまで、花弁を空に向って大きく広げ、昆虫たちに見えるよう、懸命に手を振り続けます。

4.3 花の終わりころ

 中央の花がほぼ満開になると、装飾花は花の軸(花柄)を180度まわし下を向きます。これは種子を遠くに飛ばすのに装飾花が邪魔になるから、下向きになると考えられます。

 特に赤~青紫色の花は全てが曲がっていました。しかし花柄が枯れて下を向くとの意見があります。でも自らが曲げたと考えるべきです。花柄は1g-cm以上の力で曲がります。しかし同じ形をしたガクアジサイでも、下の写真に示すよう花柄が細く花弁が白く薄いのは、曲がらずに枯れてしまいます。 

 下の左端の写真は下向きになった赤~青紫の装飾花が枯れた状態です。これ以後もそのままの形状を、花全体が枯れるまで維持します。また装飾花の花弁が薄く白い(左から2番目)のは、花弁は下を向きますが直ぐ萎れて枯れます。しかし明らかに花弁の形状は弱々しい枯れ方(中央の写真)のようです。

 花柄の細長い、例えば、スミダノナミダの仲間(右から2番目)は、果実が熟す前に右端のように萎れて枯れます。調べた範囲での推定ですが、萎れる種はガクアジサイ全体で数%以下でした。このように種類により違いますが、やっぱり一番ポピュラーな赤~青紫のガクアジサイだけは、前記したように180度に回転したり、そのまま外側に倒れたり、種子の飛散コースを自らの意思で作り上げたのが見て取れます。

4.4 アジサイの花

 アジサイの花もガクアジサイ同様に装飾花と本当の花とがあります。通常は装飾花が全体を被っているので陰になり見えません。ちょっと装飾花を手で避けて見ると、装飾花の下にガクアジサイと同じ様に本当の花が隠れています。ただガクアジサイほど沢山の花はありません。装飾花の花柄の分岐する位置に少し纏っているのが見えます。ぜひ花を見たら指先で装飾花を分けて見てください。また右端の写真に示しましたが、装飾花も花の後に花柄を回転させる行動は同じです。植物って、自然って、面白いものですね。

4.5 最後に

 ガクアジサイの種を見たことがあるでしょうか?かくいう筆者も黒いヤマアジサイの種は見ましたが、ガクアジサイはまだありません。右の写真は未熟ですが種子です。熟すと先端に穴が開き、風で揺すられ種子が飛散する、そんな姿が見えます。

 昨年は種子をみるぞ!と決心していたが、気がつくと既に枯れ落てしまった。今年は、環境の変化で昆虫が来ないのではないかと、悪い予感がしています。またアジサイは不運な花です。花が終わる頃、どこの家でも枝を切り落とし、これが種子を作らせず、見る機会も奪う原因なのかも知れません。